多くの組織の情報システム基盤において、ネットワーク分離はすでに一般的な前提となっています。研究開発ネットワーク、オフィスネットワーク、生産ネットワーク、そして外部インターネットは、ファイアウォール、DMZ、データダイオード/ゲートウェイ(いわゆる「網閘」)などにより分離されることが少なくありません。この分離設計はネットワーク全体の露出面を抑える一方で、長年解決されにくい課題を拡大させています。それが、異なるセキュリティドメイン間でファイルを安全・コンプライアンス準拠・効率的に流通させる方法です。
協業の形が変わるにつれ、ファイルは「少量・低頻度の補助データ」ではなく、設計図面、技術資料、契約書類、財務レポートといった重要な業務情報を担う存在になりました。ファイル交換の頻度は増え、関与する人も広がり、部門間・ネットワーク間・組織間のファイル転送は日常業務の一部です。この状況では、ファイル交換は単なる「ファイルを送る行為」ではなく、事業継続性、コンプライアンス対応力、リスク管理水準に直結する重要プロセスとなります。
しかし、多くの組織では依然として、二重 FTP、USB メモリ、ゲートウェイ(網閘)に付属する搬送機能、あるいは人手による中継といった従来型の方法が使われています。初期段階では最低限の要件を満たせても、データ量の増大や規制・監査要件の高度化に伴い、限界が顕在化し、現代企業が求める統制性・監査可能性・安全性を満たしにくくなっています。
なぜファイル交換がセキュリティ/コンプライアンスの高リスク点になるのか
分離環境でのファイル交換リスクは、単一要因ではなく複数の現実条件が重なって生じます。とくに、統一された管理チャネルがない場合、現場は「迂回」してファイルをやり取りしがちで、その結果、セキュリティと監査の枠組みから外れてしまいます。
代表的なリスク要因は以下の通りです。
● 働き方の変化:リモート協業、部門横断の協業が増え、ファイルの跨域移動が頻繁化
● ツールの乱立:FTP、USB、チャット、メール等が併存し、統一ルールがない
● 監査・取引先要件の強化:「どこから来て、どこへ行き、誰が承認し、誰がダウンロードしたか」を求められる
これらは直ちにインシデント化しない場合もありますが、蓄積するとデータ流通の統制力を弱めます。問題発生時には責任追跡や経緯の復元が難しく、監査機関や取引先に対して明確な証跡を提示できないリスクが高まります。
「重要だと分かっているのに」定着しない理由
多くの組織で、IT/セキュリティ部門はファイル交換リスクを認識しています。それでも導入が停滞しやすいのは、現実的な制約が複合しているためです。
よくある障壁は次の通りです。
● 従来運用が根強く、業務部門が USB や FTP に依存しており短期で変えにくい
● 交換プロセスが可視化されず、完全なログ/監査が取れない
● 承認と実際のファイル操作が分断され、承認結果を操作行為と紐付けられない
● 分離要件が複雑で、導入・改修コストが高い
● 既存ツールは安全性と利便性の両立が難しく、迂回されやすい
本質は「統制が必要かどうか」ではなく、ネットワーク分離要件を満たしつつ、現場が自然に使えるファイル交換の仕組みがあるかにあります。
FileLink のアプローチ:分離環境でも統制されたファイル交換チャネルを構築
FileLink の狙いは、既存の業務システムをすべて置き換えることではありません。ネットワーク分離の前提を崩さずに、ファイル流通のためのコンプライアンス準拠・監査可能・統制可能な専用チャネルを提供することです。中心となる問いは「現行アーキテクチャを変えずに、ファイル交換を“システムの中”へ戻すにはどうするか」です。

アーキテクチャ面では、FileLink は内網(社内)と外網(DMZ/外部側)にそれぞれファイル交換サーバを配置し、ファイアウォール、DMZ、データダイオード/ゲートウェイ等の分離設備と組み合わせて、複数ネットワーク間のファイル搬送を実現します。ファイルは端末間で直接(P2P)転送されず、統制された交換プラットフォームを経由して中継されるため、後続のセキュリティ検査、承認、監査の土台が整います。
利用面では、FileLink はエンドユーザー向けに統一されたファイル交換入口を提供します。内網ユーザーは統制環境で送信(投函)を起点にし、受領者を明確に指定します。外部または他ネットワーク側のユーザーは、権限付与された条件下でのみ受領・ダウンロードできます。全操作は記録され、監査対象として管理されます。
中核機能:ファイル交換をライフサイクル全体で管理
FileLink は「送れたかどうか」だけでなく、ファイル交換のライフサイクル全体に対して多層的な統制を提供します。
送信前:ファイル属性や送受信者の条件に基づき、承認フローを自動起動。多段承認、複数者承認、会議型(会签)/個別型(或签)などに対応し、機微ファイルが流通前に適切な審査を経るようにします。
送信中:コンテンツセキュリティ検査(機微情報検知、アンチウイルススキャン等)を実施。キーワード、正規表現、OCR などでファイル内容の機微情報を識別し、結果に応じて通過・警告・遮断を制御します。
送信後:全ての交換行為が監査ログとして残り、履歴は自動アーカイブ。権限に応じて交換記録、承認記録、操作記録を参照でき、コンプライアンス確認や内部追跡に活用できます。
ファイル単位のセキュリティ制御:二次漏えいリスクを低減
ファイル交換が完了しても、リスクが消えるわけではありません。FileLink は受領側での利用方法を制限できる、より細かな制御を提供します。
外部送信ファイルに対して、有効期限、ダウンロード回数、抽出コード(提取碼)検証などの条件を設定可能です。より高い保護が必要なファイルには、閲覧回数制限、印刷禁止、コピー禁止、スクリーンショット禁止、表示時の透かし付与などのアクセス制御も適用できます。
これらはファイル自体の内容を書き換えるのではなく、統制されたアクセス方式により、交換後の拡散リスクを抑え、流通を予測可能な範囲に保ちます。
代表的な適用シーン:分離環境での実運用に落とし込む
研究開発と生産が分離された環境では、R&D 端末がオフィス網やインターネットへ直接アクセスできないことが一般的です。FileLink を使えば、R&D 側の安全ドメイン内でファイルを提出し、承認と検査を経てからシステムが跨網交換を実施できるため、USB などの非統制手段を回避できます。
対外協業では、顧客・サプライヤ・パートナーへファイルを渡す必要があります。FileLink は共有リンク方式で、パスワード認証や期限設定などを行い、各ダウンロード操作に対して証跡を残せます。
監査・コンプライアンス要求が厳しい組織では、FileLink のログと監査能力により、交換行為を明確に復元でき、内部統制と外部監査の双方に対して信頼できる根拠を提示できます。
統一チャネルから始め、段階的に秩序を作る
FileLink は通常、次のような段階的アプローチで導入します。
- 跨網ファイル交換の統一入口を整備
- 重要業務ファイルの交換をシステムに取り込み
- 承認とセキュリティ検査のポリシーを有効化
- 監査と履歴アーカイブを整備
既存業務への影響を最小化しつつ、分散していた交換行為を段階的に集約できます。
まとめ:ファイル交換を「統制可能・監査可能」な状態へ戻す
ネットワーク分離が前提の環境では、ファイル交換を場当たり的な手段や個人依存の運用に任せるべきではありません。FileLink は、跨網ファイル流通をシステムで管理し、見える化・記録・監査を可能にします。
一度で全シーンを覆うことよりも、実運用で長期に安定稼働することを重視し、組織にとって持続可能なデータ交換の基盤能力を築く考え方です。
FAQ(よくある質問)
Q1:FileLink は既存のネットワーク分離構成を変更する必要がありますか?
A:不要です。既存のファイアウォール、DMZ、網閘(分離ゲートウェイ)等の構成のまま導入できます。
Q2:大容量ファイルの転送に対応していますか?
A:対応しています。高性能転送機構を備え、レジューム(断点再開)と整合性チェックに対応します。
Q3:ファイル交換プロセスで承認を行えますか?
A:可能です。ポリシーに基づき多段承認フローを自動起動でき、承認テンプレートもカスタマイズできます。
Q4:外部受領者のファイル利用を制限できますか?
A:可能です。有効期限、ダウンロード回数、アクセス権限制御などに対応します。
Q5:完全な監査ログを提供しますか?
A:提供します。ファイル交換、承認、関連操作行為を一元記録し、監査閲覧に対応します。